umikaki diary

ガジェットから日常まで

「SIMロック原則禁止」にみるキャリアとスマホメーカーの関係

去る1月末、通信料金値下げで話題となっている携帯電話業界において、新たな動きが見られる報道が相次ぎました。総務省有識者会議において、通信キャリアから購入するスマートフォンで現在行われている「SIMロック」を「原則禁止」とする案をまとめた、ということです。

現在も、利用者が申し込めば、スマートフォン端末を一括で購入した場合や、分割で購入する場合でも一定の条件を満たせば、スマートフォンSIMロックを解除することが可能です。2019年に「通信と端末の分離」が行われてから、大手キャリアにおいては通信契約を伴わない端末購入が可能となりましたが、その際に、スマートフォンを一括購入した場合では、NTTドコモにおいては利用者の申し出にかかわらずSIMロックを解除した状態で、KDDISoftBankにおいては利用者の申し出があった場合に、手数料無料でSIMロックを解除することが可能になっています(詳細は下の記事をご覧ください)。

そもそも「SIMロック」とは何か

SIMロック」とは、スマートフォンを販売する通信キャリアのSIMカードのみを認識させ、他社のSIMカードを挿してもSIMカードを認識させず、他社のモバイルデータ通信を行わせないように制限することを言います。

それとは逆に、「IMEIロック」というものもありますが、こちらはSIMカード側に制限がかかっている状態で、IMEIロックがかかっているSIMカードを特定のスマートフォン以外に挿した場合にモバイルデータ通信不能にすることを言います。有名なものとしては、SoftBankAndroidSIMカードや、KDDIのデータ通信用SIMカードなどがあります。

SIMロック解除」とはSIMロックがかかって他社のSIMカードを認識できないスマートフォンを、他社のSIMカードでも通信可能にすることを言います。

なぜSIMロックを行うのか

SIMロックを行う理由として、キャリア側の主張としては、盗難や端末代金の踏み倒しが挙げられます。「通信と端末の分離」が行われる前は、通信契約(主にMNP)を行うことを条件に、スマートフォンの端末代金を「一括0円」とするということも当たり前に行われていました。これは、端末代金を値引きする見返りとして、長期間にわたって囲い込みを行い、その間に支払われる通信料金で端末代金の肩代わりを行うというものです。このとき問題になるのが、端末を0円で購入し早期に解約を行うことです。こうなると端末代金を通信料金から回収することができなくなり、通信キャリアにとっては大きな大きな問題になります。SIMロックをかけることにより、他社で一括0円で購入したスマートフォンを使用できなくすることで、キャリアとしてはこの問題を回避しようと考えていたわけです。

SIMロック禁止」で顧客の流動性は上がるのか

総務省としては、囲い込みの原因となっている「通信契約を伴う高額な端末代金の値引き(一括0円など)」「SIMロック」を禁止することで、顧客の囲い込みを禁止するということを行おうとしています。「通信契約を伴う高額な端末代金の値引き」については、「通信と端末の分離」の際に、「通信契約を伴う端末代金の割引は2万円まで」とすることで、高額な端末代金の値引きは禁止されることとなりました。「SIMロック」については、一括購入した場合については、利用者の求めに応じて、「原則無料で」SIMロック解除を行うこととしました。当初は自分が購入した端末のみのSIMロック解除という形でしたが、こちらも総務省の求めにより、他人が購入した端末(中古スマホ等)においても、SIMロック解除を行えるようになりました。

スマートフォンSIMロックがかかっていない、SIMフリーの状態になることで、原則どの通信キャリアのSIMカードを挿しても通信が可能になります。この恩恵を最大限受けることになるのが、日本で50%近くという圧倒的なシェアを持つiPhoneです。iPhoneは大手3キャリアからSIMロックがかかった状態で発売されていますが、iPhone本体は型番含め全く同じです。SIMロックを解除すれば、購入した通信キャリア以外のSIMカードを挿しても、他社で購入したのと全く同じ環境で通信が行えます。iPhoneを使用しているユーザであれば、SIMロックが禁止されることにより、他の通信キャリアでも現在使用しているiPhoneがそのまま使用でき、流動性は上がると考えられます。

一方、キャリアが販売しているAndroidスマートフォンはどうでしょうか。

例えば、Android端末で人気の高いXperia 5 IIは、ドコモ、KDDISoftBankからそれぞれ販売されています。しかし、端末の形こそは同じでも、型番はそれぞれSO-52A、SOG02、A002SOとなっており全く違います。ハードウェアも異なり、それぞれ対応している周波数帯が全く異なります。スマートフォンにインストールされているOSも、それぞれのキャリア専用となっており、SIMロックを解除したからといって、SIMフリー端末(メーカ直販モデル)と同じになるわけではありません。

Galaxyにおいては、販売される各キャリアによって対応する周波数帯が異なるだけでなく、Galaxyを現在販売していないSoftBankにおいては、VoLTE通話に対応していません。3Gの停波が迫る中、VoLTEに対応していないということは、3G停波後、通話が不能になり、電話機として使用できなくなります。

各キャリアが販売するAndroid端末は、スマートフォン自体が販売するキャリア専用モデルとなっており、SIMロックは解除できても、対応する周波数帯の違いから、原則として他のキャリアで使用することは不可能です。Android端末においては、そもそもSIMロックを禁止すること自体が無意味であり、SIMロックを禁止することで、さらにハードウェア側のカスタマイズを強化し、他社のVoLTE通話に一切対応しないというスマートフォンが出てくることが懸念されます。

なぜ通信キャリア専用モデルなのか

ここ最近、SIMフリーモデルとして発売してきた端末メーカが、キャリア独占モデルを発売し始めることが多くなりました。

例えば、先日発表されたXiaomiの「Redmi Note 9T」、Xiaomi初となるFeliCa対応モデルとなりましたが、SoftBank専用モデルとなりました。SoftBank独占となったことで、この「Redmi Note 9T」を他社で使用するには「SIMロックの解除」が必要になりますし、OSやハードウェア自体もSoftBank専用にカスタマイズされており、SIMロック解除をして他社のSIMカードを挿して使用しようとしても、何かと不便な状態になることが予想されます。

ここ最近力をつけてきたOPPOも、5Gモデルはそれぞれ違うモデルをKDDISoftBankモデルとして独占販売しています。

Galaxyに至っては通信キャリア専用モデル以外のスマートフォンを表向きに販売しておらず、日本で発売されているほぼ全てのモデルがキャリア専用のスマートフォンとなっています。

ではなぜAndroidスマートフォンメーカは、通信キャリア専用にわざわざカスタマイズし、専用モデルとしてキャリア独占販売させるのでしょうか。

1つ目に言えることは、「FeliCa」の存在です。

以前、HTCがHTC U12+をキャリアモデルとしてではなく、メーカ直販のSIMフリーモデルとして販売し、しかもFeliCaに対応しているということで話題になりました。そのときのHTC NIPPON 児島社長へのインタビュー記事(ITmedia)を見てみます。

上記記事の中で、「SIMフリーおサイフケータイに対応させる苦労」ということを話されています。この中で、メーカ直販モデルでFeliCaに対応させるには、メーカ側でフェリカネットワークスJR東日本という、FeliCaのハードウェアメーカと交渉する必要があることが書かれています。キャリア端末の場合は、FeliCaのハードウェア側についてはキャリアが肩代わりしてくれるということもあり、スマートフォンメーカとしても開発しやすいことが伺えます。

この部分については、FeliCaのデータ消去がそれぞれのキャリアで異なること、メーカ直販のSIMフリーモデルでは、メーカに直接依頼する必要があることからも想像できます。

今回、Xiaomiの端末がFeliCa対応にできたのも、SoftBankというキャリアの力を借りることによって対応できたと想像することができ、SoftBankの力を借りた以上、SoftBank専売とせざるを得なかったということが考えられます。

FeliCa対応以外にも、スマホメーカが直接顧客とやり取りせず、通信キャリアとの、いわゆるBtoBでやり取りするメリットもあります。BtoBでやり取りすることで、通信キャリアが比較的高額でスマートフォンをメーカから調達し、なおかつ売れ残りを少なくさせることも可能になると考えられます。メーカが直接顧客とやり取りすると、不安定な値動きや、売れ残りを抱えるリスクもあります。BtoBのやりとりでは、BtoCよりも売り上げを多くでき、安定してキャリアへの供給が可能になるということも考えられます。

さらには、スマートフォンを使う多くのユーザが「スマートフォンは通信キャリアから購入するもの」と捉えていることにより、端末メーカが直接スマートフォンを単体で販売しても売れないと考えていることも挙げられます。

SIMロック禁止」で顧客の流動性を高めるためには

今回の総務省の「SIMロック禁止」の議論は、いささか拙速であると感じられます。日本のスマートフォンシェアで約半数を占めるiPhoneでは、上記のような問題は発生しないため、そこまで大きな問題にはならないのだろうと思います。

しかし、Android端末がこのような問題を抱えている以上、SIMロックだけを禁止することは無意味なことです。SIMフリーが活発にならないのは、日本のスマートフォン市場の特殊性ということを言われていますが、SIMフリーとして販売しようとするスマートフォンメーカへの補助、特にFeliCa対応の問題は喫緊の課題でしょう。

総務省は、携帯キャリアだけに締め付けを強化するのではなく、スマートフォンを供給するメーカへの対応も行うことが必要です。